Bリーグを徒然なるままに…

Bリーグのあれこれを書きます

~弱者が生み出す正攻法~ 戦術〇〇④ 新潟編(中編)

単純に忙しかったこと、島根について書こうと思ったが気付けば別のテーマになって頓挫したことなどが重なり更新が滞りました。

すみません。

 

新潟の現実逃避編その②です。

とはいえこのテーマ誰も見てないんじゃないかと思いながら進めています。

 

新潟の成功を三河と比較して考える

新潟で中地区優勝という一定の成果を手にしたガードナー選手ですが、三河に移籍後は少なくともチームでの成功を得てはいません。

 

特に昨季はガードナーの周りに金丸川村ウィティングトンといった40%越えの優秀な3Pシューターたちに柏木コリングワースに長野熊谷といった司令塔たちを揃えました。

インサイドの相方となったシェーファー選手も滋賀時代から成長を見せ、インサイドで戦う能力の上昇とともに3Pもノーマークなら打ち抜くことができるようになりました。

なのにチームは34勝21敗の西地区3位にとどまりました。

もちろん川村選手の失速やウィティングトン選手の離脱などの要素はあったにせよ、それでもなお勝ちきれなかったことは事実としてのしかかります。

しかし18-19シーズンの新潟は異なりました。

では何が異なっているのか、前回の記事にもあったスタッツを比べてみましょう。

 

ダバンテ・ガードナー

18-19シーズンスタッツ(かっこは昨季)

60試合(54試合)

平均36分出場(30分)

得点…27.6点(19.9)

リバウンド…11.0本(7.6)

アシスト…3.8本(5.0)

ターンオーバー…2.3本(1.9)

3P成功率…22.8%(30.7)

FG成功率…57.6%(55.7)

 

プレーの幅を広げたと前回は書きましたが今回の趣旨は違います。実はこれが大きい。

実はこの年新潟はガードナー選手に役割を基本的には与えませんでした

彼に与えられた役割はたったの一つです。

・ボールをもったらリングに向かって得点を取れ

これだけです。ホントにこれだけ。知性のかけらも求めませんでした。

・3Pの試投数が今季と比較して少ないこと

・FT試投数は今季と比較して多いこと

これらのことからもスタッツ的にもインサイドでよりファイトしていたことがわかります。

ただこれが正解だったのも紛れもない事実です。

何故この形で成功したのか、見てみましょう。

 

ガードナーに知性が必要なかった理由①

五十嵐圭選手

18-19シーズンスタッツ

59試合(スタメン59試合)

平均31分出場

得点…11.5点

リバウンド…3.0本

アシスト…5.2本

ターンオーバー…1.8本

3P成功率…34.2%

FG成功率…41.7%

 

柏木真介選手

18-19シーズンスタッツ

55試合(スタメン55試合)

平均27.5分出場

得点…7.8点

リバウンド…3.0本

アシスト…3.1本

ターンオーバー…1.6本

3P成功率…34.7%

FG成功率…38.0%

 

森井健太選手

18-19シーズンスタッツ

59試合(スタメン4試合)

平均16分出場

得点…2.8点

リバウンド…1.6本

アシスト…2.7本

ターンオーバー…1.0本

3P成功率…29.4%

FG成功率…40.8%

 

新潟はハンドラーポジションをこの3人で回しました。

平均プレータイムを単純に合計すると74.5分です。

つまりほぼすべての時間を2ガードで戦っていたことになります。

 アシストも3人で約11本を記録していますし、ゲームメイクやプレーメイクにガードナー選手の労力を使う必要はありませんでした。

 森井選手以外の2人はFG試投数のうち半分以上が3Pシュートとなっており、後述するガードナーのパスアウト先としても機能していたことも記しておきます。(五十嵐選手は7割超が3Pです、なんだこのおっさん若い)

 

ガードナーに知性が必要なかった理由②

池田雄一選手

18-19シーズンスタッツ

60試合(スタメン0試合)

平均19分出場

得点…4.7点

リバウンド…1.9本

アシスト…0.6本

ターンオーバー…0.3本

3P成功率…40.2%

FG成功率…39.7%

 

上江田勇樹選手

18-19シーズンスタッツ

54試合(スタメン46試合)

平均20分出場

得点…4.4点

リバウンド…1.5本

アシスト…0.9本

ターンオーバー…0.6本

3P成功率…29.4%

FG成功率…36.7%

 

渡辺竜之佑選手

18-19シーズンスタッツ

48試合(スタメン17試合)

平均12分出場

得点…2.1点

リバウンド…3.2本

アシスト…0.5本

ターンオーバー…0.4本

3P成功率…10.0%

FG成功率…45.2%

 

彼らのスタッツは池田選手を除けば決していいものではありません。

しかしその役割は実は大きなものでした。

彼らはオフェンス時に基本的に同じ動きしかしなかったというのが大きな特徴です。

池田選手はコーナーなどで3P待機

渡辺選手はコーナーからのカッティング

上江田選手はそれらのどちらもをこなしていましたが、言い換えればどちらかしか役割がありませんでした。

これって本来大問題です。

そりゃあマルチに様々な役割がこなせる選手は重宝されますし、シューターであれば動き回ってフリーになる能力やハンドラーとしてドライブする能力もあった方が良い。

ただ、ガードナーを生かす意味ではこれがいい方に作用していました。

彼らは同じ動きをするためにガードナーのパスアウト先として有効だったということです。

前述した三人もガードナーがボールを持つと動き回ることはしませんでした。

少し動いてパスアウト先を作るだけ。

結果としてそれがガードナーにインサイドの広大なスペースを与えることになりました。

 

つまりこの年の新潟は

ガードナーの得点力を最大限に生かすために極端な戦術に舵を切り倒した

というわけなんですね。

実はこれは今村選手が出られなかった件が大きいのも事実です。彼は様々な役割をこなせますし、新潟でも実際にさせていたでしょうからガードナー選手がここまでいかされたのかはわかりません。

 

三河は戦術ガードナーに振り切れるのか

そして現状の三河ですが、金丸、川村、熊谷、高橋などの選手が抜け、来季は戦力ダウンが予想されます。

ただしガードナー選手と彼とともに勝った経験を持つ柏木選手は残りました。

ここまで極端な戦術をすることはないでしょうが、ガードナーの得点力に振り切る戦術は勝つためには取る必要があります。

ただまあ鈴木HCってインサイドの選手にプレーメイクさせるの好きだろうしガードナーに知性をこれまでと同じように求めるような気もしています。

点取り屋のガードナーはチームを勝たせることができる、これは証明済みです。

では、オールラウンダーのガードナーはチームを勝たせることができるのか、これが試されるシーズンになりそうです。

 

そして新潟はどうなるのか。わかりませんが現状を次回で分析して見ます。

 

 

~弱者が生み出す正攻法~ 戦術〇〇③ 新潟編(前編)

前回2回分を使って富山の躍進を紐解いてみました。

彼らが用いたのはアウトサイドの外国籍プレイヤーに多くのことを任せる戦術マブンガ。

このような戦術で結果を最大級に出したチームが今回紹介する18-19シーズンの新潟です。

ずばり戦術ガードナー。その中身には資金に乏しいチームが勝ちあがる方法論に溢れていました。

新潟ファンの現実逃避になればなと思います。

 

ガードナーの当時と今

18-19シーズン

新潟アルビレックスBB成績

45勝15敗(中地区優勝)

80.2得点 73.3失点

素晴らしい成績でした。

中身を見てみるとオフェンスレーティングがリーグ4位(107.5)、ディフェンスレーティングがリーグ6位(98.2)とどちらも素晴らしい数字を残しました。

その中でも気になるのが、

ペース 74.2(18位)

これです。この年はペースの遅いチームが上位に入るシーズンだったのですが(おそらくレギュレーションの関係上)、新潟も例に漏れずペースを落としていました。

その躍進の中心になっていたのが

ダバンテ・ガードナー

18-19シーズンスタッツ()は今季

60試合(54試合)

平均36分出場(30分)

得点…27.6点(19.9)

リバウンド…11.0本(7.6)

アシスト…3.8本(5.0)

ターンオーバー…2.3本(1.9)

3P成功率…22.8%(30.7)

FG成功率…57.6%(55.7)

 

文句のつけようがない活躍なのですが、今季と比較するといくつかのことがわかります。

・シュート力の向上

3Pの%は大きく上がりました。決して武器にできる数字ではありませんがそれでも8%の向上は立派です。

・プレーメイク能力の向上

アシストが増えました。インサイドからキックアウトパスを出すことも増加傾向にあります。

以上二点から言えるのは、ガードナー自身はプレーの幅を広げてステップアップできているということです。

ただ、このシーズンの新潟ほどにはここ2年の三河は勝てていません。

メンバー的にはここ2年の三河の方が勝てそうなのにもかかわらず、です。

ということで18-19の新潟を少し深掘りしてみましょう。

 

ガードナーの特性

まず、当時のガードナーの得点パターンを見てみましょう。

ポストプレー

これが強い(当たり前)。ただ、こればかりだと疲れてしまいます。

・ボール運びからそのままアタックする

これも多かったです。ただ、同じくスタミナ面での疲労がたまりそうです。

・ピック&ロールのロールマン

このプレーでミスマッチを作って得点という場面も多かったです。

負担を減らすという意味でも有効活用できていました。

フリースロー

これに関しては1試合当たりのFT試投数が今季よりもおよそ2本多くなっています。

ファールドローする上手さもありましたが、させる状況づくりもうまかった印象です。

ちなみにファールドロー数は今季のおよそ2倍です。

これらの特性を最大限に生かす必要性があります。

少なくとも外でボールを持ちたがるマブンガとは異なります。

 

ガードナーに必要なもの

上記のことからガードナーを最大限に生かすチームの形を考えてみます。

インサイドを空けることのできるシューター

4アウト気味でスペースを作りたいので、シューターでなくてもよいのですが、やはり3Pはあった方が良いでしょう。

スペースを作るのがオフェンス面でのメインの仕事になるので、実は動き回る選手とは相性がよくありません。(金丸との関係性は難しかった)

・ピック&ロールができる優秀なハンドラー

五十嵐選手のことなのですが、彼でなくてもピック&ロールをしながらパスを出せることと、プルアップで3Pシュートを打てることが条件になります。理由はガードナーにミスマッチをついてもらうこととやはりスペーシングです。

富樫選手とか合う気がしますしB2に移籍した笹山選手なんかも実は相性が良さそうだなと思っていました。

・スペアガードナー

これはハミルトン選手ですね。

ガードナーの負担を減らす意味でも似た役割をこなせる選手というのは間違いなく必要になると考えます。

 

これが噛み合うとガードナー選手の勝利への影響力は増していくと考えています。

三河はここを揃えていない。(そういう戦術をそもそも志向していない気もしますが)

大して18-19シーズンの新潟はここをバッチリ揃えていました。

次回は新潟の18-19シーズンを詳しく見ていこうと思います。続く

 

 

~弱者が生み出す正攻法~ 戦術〇〇② 富山編(後編)

今季戦術マブンガを駆使し、躍進を遂げた富山。

今回は富山の来季を占ってみます。

 

戦術マブンガに必要なもの

そもそも戦術マブンガをする上で必要なものは何なのでしょうか。

今季の富山を振り返って考えてみましょう。

・マブンガ(マブンガ)

これはまあ当たり前ですね。

・マブンガにロールマンをさせるセカンドプレーメイカー(宇都、岡田)

京都時代は伊藤選手や寺嶋選手などがこの役割でしたが、単純に得点能力が増しました。

・3Pシューター(前田、松脇、水戸)

京都時代はここは内海選手、松井選手、岡田選手、晴山選手辺りでしたかね?

インサイドで戦える外国籍選手(スミス、ソロモン)

京都時代はサイモン選手ですね。

向こうでもNBA選手が捕まってますが大麻って流行ってるんですかね。見習いたくはない文化だ。

・日本人枠でインサイドで戦えるストレッチフォー(橋本)

京都時代は永吉選手ですね。

ここら辺りが必要になってきます。

3Pシューターに関しては動き回る必要はなく、むしろしっかりシュートスポットにいることができればいいというのも特徴です。

では、来季のロスターを見てみましょう。

 

富山のロスター変遷

敬称略

残留

宇都

山口

水戸

阿部

スミス

マブンガ

 

新加入

KJ松井

晴山

小野

上澤

飴谷

※上澤、飴谷両選手は特別指定からの本契約

 

移籍

前田

松脇

岡田

城宝

橋本

 

外国籍選手をもう1人連れてくるイメージでしょうか?

若手3人が抜けたことは大きく騒がれ、しばしば「富山は終わった」だとか、特に「岡田や前田は絶対に出してはならなかった」と言われています。

果たして本当にそうでしょうか?

富山は来季勝てないチームなのでしょうか?

確かに前田岡田のどちらかは残せたのではとも思いますが、前田岡田(松脇)の各選手がこのチームのマスターピースだとは思わないんですよね。

以下に富山が来季も勝てるのではと思う理由を示してみます。

 

①マブンガと宇都を残せた

このチームの核であるマブンガ選手、そしてチームの顔でセカンドハンドラーを今季高いレベルでこなした宇都選手は残留させることができました。

マブンガ選手の移籍はないだろうと考えていましたが、宇都選手を残せたのは大きいと思います。個人的には岡田選手と前田選手よりもチームでの役割は大きく、替えの利かない役割を担っていたと思っていますので。

と、いうのもハンドラーという点で宇都選手は岡田選手と被りますが、ゲームメイクの能力においては岡田選手に宇都選手は勝ります。

これはPGをこなしてきた経験がものをいうところであるのである程度は仕方のないことなのですが、それでもマブンガの代わりを岡田にするのか宇都にするのかどちらか選べと言われると、私は宇都選手を選びます。

ですので、正直誰が抜けようとマブンガ宇都を残せたのだから富山は十分と思っています。

サードハンドラーとして阿部選手も残せましたしね。

 

②シューター陣は代わりが用意できた

シューター陣では特に4割近い成功率を誇った前田選手が抜けたのはかなり痛いのは事実です。

しかし、その代わりは用意できました。

 

松井啓十郎選手

20-21シーズンスタッツ

52試合(スタメン13試合)

平均22分出場

得点…8.2点

リバウンド…1.9本

アシスト…1.1本

ターンオーバー…0.7本

3P成功率…41.5%

FG成功率…43.2%

 

松井選手が前田選手より上の選手、とは言いません。

しかしキャッチアンドシュートを打つ能力に関してはかなり高いものを持っています。

マブンガと組んでいた19-20シーズンでは47.2%の3P成功率を残しましたし、相性も悪くないでしょう。

松脇選手がこなしていた所謂3&Dの枠には晴山選手が加入しました。

こちらも滋賀で3Pを39.0%成功させており、シューターとしては申し分ないでしょう。

マッチアップ相手は恐らく松脇選手とは異なりますが、シュート力という点では補強になったと言えるはずです。

 

若手が抜けたことが痛いと思われる方も多いでしょうが、富山は特別指定で加入させていた上澤、飴谷の両選手と本契約を結びました。

特に、マルチディフェンダーでありながら大学時代は時にハンドラーもこなした飴谷選手が来季どのような役割を果たすのかは非常に楽しみなところです。

 

③その他の理由と結論

橋本選手の部分も小野選手を獲得して上手く穴埋めをしたように思いますし、富山は流出が騒がれる割にうまく立ち回ったとみています。

結論としては

・流出は痛い、若手トリオは何人かに絞って残すことはできなかったとは思う

・ただ、核の部分はきちんと残せた

・シューター部分に関してはマルチさは失ったがシュート力は上げることができたのでは

よって、マブンガと宇都に頑張ってもらいましょうというのが来季の富山の方針でしょうし、間違った方向でもないと思います。

 

来季西地区に移動になる富山。

今季の躍進は再び起こるのか見ていきたいところです。

 

 

~弱者が生み出す正攻法~ 戦術〇〇① 富山編(前編)

開幕して5年経った今、Bリーグの上位陣はある程度固定されています。

今季を制した千葉

初代王者の宇都宮

今年の天皇杯を制した川崎

今季は振るわなかったが連覇をしていたA東京

西の雄の地位を確立しつつある琉球

これらのチームは人気もさることながら、潤沢な資金力を持っています。(若干宇都宮は違う気がしますが)

金がなきゃロシターもサイズも来ませんしね。

 

その一方で資金力に欠けいい選手を集めることができないチームも確かに存在しています。

そんなチームはどうするのでしょうか。

ただ指を咥えて強豪チームに蹂躙されるのでしょうか。

彼らに対抗する術、それは一人のスーパープレイヤーへ依存し、彼を周囲で盛り立てるというものです

そんな戦術が成り立つ選手は限られますし、強豪チームにはそんな選手は不要だったりします。

そんなチームをこれからいくつか見てみようと思います。

 

浜口炎と戦術マブンガ

今季そのような資金力の乏しいチームで最も結果を残したのは富山グラウジーズでしょう。

Bリーグ1,2年目には降格圏を彷徨っていたチームは今季リーグNO.1の平均得点(89.2)を武器にリーグを席捲し、ついにはCSにまでたどり着きました。

今季から就任した浜口炎HCが繰り出した戦術は、昨季まで指揮していた京都でも用いられていたものでした。

 

ジュリアン・マブンガ選手

20-21シーズンスタッツ

53試合(スタメン52試合)

平均34分出場(リーグ1位)

得点…20.7点(リーグ3位)

リバウンド…7.3本

アシスト…7.4本(リーグ1位)

ターンオーバー…3.8本(リーグ1位)

3P成功率…36.8%(キャリアハイ)

FG成功率…46.5%

 

浜口HCとともに京都に移籍してきたマブンガ選手にゲームメイクと得点の全てを託す「戦術マブンガ」。

マブンガ選手がトップでボールを持ち、3Pを狙いつつインサイド、アウトサイドにパスを散らす。

その一方で日本人ハンドラーのロールマンをこなしてインサイドでパスをもらい得点を狙う。

要するにハーフコートのすべてをマブンガに任せる戦術です。

これによって富山は躍進を果たしました。

ただ、この戦術で京都が勝てていたのかというと、実はそんなことはありません

 

京都ハンナリーズ

19-20シーズン

20勝21敗

18-19シーズン

31勝29敗

決して悪い成績ではありませんが今年の富山(39勝21敗)には遠く及びません。

しかも富山はレベルが高いとされる東地区での成績です。

なぜ、突然戦術マブンガは機能したのか。

1試合当たりのポゼッション数

18-19シーズン京都

75.7(リーグ11位)

19-20シーズン京都

76.6(リーグ6位)

2突き抜けきらなかった

79.2(リーグ2位)

 ペースが過去二年と変わりました。

このペースの上にいるのはフルコート戦術を用いる渋谷のみ。

鈍足のスミス選手がいる今季の場合、普通に考えてペースは落ちるはずでしたが、そうはなりませんでした。

ここの部分に突き抜けきらなかった戦術マブンガの進化があると考えます。

 

ペースアップの原因

宇都直輝選手

20-21シーズンスタッツ

60試合(スタメン54試合)

平均23分出場

得点…10.4点

リバウンド…2.3本(富山に移籍してから最低)

アシスト…3.8本(富山に移籍してから最低)

ターンオーバー…2.0本

3P成功率…25.0%(試投数は20本)

FG成功率…52.0%(キャリアハイ)

Bリーグ開幕してから富山一筋でこのチームの象徴的存在でもある宇都選手はマブンガ選手の影響を受けたように見えます。1試合当たりのFG試投数もBリーグ発足してから初めて8本を切りました。

ただ、一方でFG成功率は自身のキャリアで初めて50%を超えました。

スミス選手がインサイドに陣取ることで、ハーフコートで宇都選手にスペースはこれまでのように与えられませんでしたが、宇都選手がこれまで以上に積極的にファーストブレイク、速攻に走りました。

ペースアップという意味でも非常に効果がありましたし、マブンガ選手とスミス選手は速攻に参加するわけではないので彼らが絡まない形の得点方法があることは戦術の進化であったと思います。

また、ハーフコートバスケットになってもマブンガ選手起点のみではなく、岡田選手からオフェンスを展開できることも大きかったのではないでしょうか。(岡田選手についてはこちらの記事をどうぞ)

baskba28.hatenablog.com

マブンガ選手起点で彼に得点やインサイドへのアシスト、キックアウトからのアシストをさせる戦術において、彼に合ったプレイヤーであった前田選手を始めとするシューター陣はもちろんのこと、彼とのフィットが懐疑的であった宇都選手と岡田選手が共存を実現させたことがチームの躍進につながりました。

 

富山の明日はどうなる

と、まあこんな風に躍進を遂げた富山ですが、

今季のチームから

前田選手、岡田選手、松脇選手

の主力として活躍した若手トリオが抜けることになりました。

あと大麻野郎

貧乏って辛い。

ということで次回、富山の来季を占います。

大丈夫なのでしょうか、心配です。

 

 

 

橋本拓哉は再び輝けるのか

土日は動きがないですね。

移籍市場はどうなっていくのか今後も注視したいですが、今日は個人の話です。

橋本選手についてですが、個人的にBリーグで最も好きな選手です。

彼が去年いかに活躍したのかを語るために数字を持ち出してみようと思います。

ちなみに見切り発車なのでより良い数字を出す選手がたくさんいるかもしれません。

 

EFFについて

BリーグのスタッツにはEFFというものがあります。

端的にいえば貢献度の高い指標です。

今季一番高かったのは川崎のファジーカス選手でした。(EFF1530)

これのランキングを見てみるとずらっと外国籍選手と帰化選手が並ぶのですが、

41位にようやく帰化選手ではない日本人選手が出てきます。

41位 齋藤拓実 EFF860

いや、橋本選手じゃないんかい。

今日の表題になっている橋本選手は

85位です。(EFF437)

日本人では22番目ですのでさほどすごい数字ではありません。

ところがEFFを1試合平均にすると若干話が変わってきます。

 

日本人(帰化除く)選手のEFF平均値ランキング

1位  齋藤拓実        15.6

2位     金丸晃輔        14.0

3位  藤井祐眞        13.4

4位  富樫勇樹        13.1

5位  宇都直輝        12.3

6位  田中大貴        10.9

7位  橋本拓哉        10.9

8位  川嶋勇人                10.8

9位  ベンドラメ礼生                10.6

10位   シェーファーアヴィ幸樹 10.5

橋本選手は7位に来ます。

このEFFという数字はボールに多く絡む選手がどうしても数字が高くなっていく指標です(齋藤、藤井、富樫、宇都、ベンドラメ各選手)のでこの順位に着けていることはかなり立派です。

田中選手も怪我がありましたが相も変わらず価値の高い選手であることもここから見て取れます。

金丸?MVPです。なにかありますか?

 

橋本拓哉の貢献要因

では、橋本選手が何によって貢献度を高めていったのか。

ズバリ得点です。

日本人(帰化除く)得点ランキング

1位 金丸晃輔 16.8

2位 富樫勇樹 13.8

3位 橋本拓哉 13.4

規定試合には未達なのですが素晴らしい数字です。金丸バケモン。

細かく見てみると

得点…13.4点

3P成功率…43.1%(リーグ5位相当)

FG成功率…49.3%

FT成功率…86.1%(リーグ7位相当)

こんな感じになっています。

3Pシューターなのかなと思わせるスタッツですが、金丸富樫の両選手がシュートアテンプトのおよそ半分を3Pで占めるのに対し、橋本選手は3Pのアテンプトが全アテンプトのおよそ3分の1(130/400)となっています。

高確率の3Pシュートを持っているが、それに頼らずとも得点を量産できる選手。

実際にどんな感じで得点をとってるのかは橋本選手のキャリアハイの動画を見ればわかりやすいです。(橋本拓哉 キャリアハイで検索できます)

URL貼って良いのかわからないので…。

 

 

動画を見てもらえるとわかるのですが、オープンに動くシューター的な振る舞いと、ハンドラーとしてプレーメイク、ドライブを選択してプレーをしています。

外国籍選手に大きな役割を与えている今のBリーグの環境でここまでの仕事をこなしているウイングプレーヤーは他にいないと個人的に思います。

今季の大阪は角野選手が加入して、プレータイムが貰えませんでしたが、干されたというのではなく、橋本選手がその上を行ったという認識が正しいと思います。

 

もう1度輝けるのか

だからこそ今季、橋本選手が終盤に大怪我をして、離脱してしまったことは本人にとっては非常に痛い出来事だったと思います。

この活躍を続けていれば日本代表というのも見えていた矢先だったと思いますから。

ただ、橋本選手はまだ26歳。復帰後もこのハイパフォーマンスを続けていけば日本代表の座も見えてくるのではと思います。PGもこなせるタイプですし。

そして何よりも大阪が優勝するならば、橋本選手の活躍は絶対に欠かせないはずです。

みなさん、橋本拓哉選手に注目して見てください。

 

 

 

杉浦佑成は三遠を救えるのか

 

 

今回は島根から三遠に移籍が発表された杉浦佑成選手について書いていこうと思います。

ズバリ彼は三遠を降格から救えるのか、見ていきましょう。

 

三遠ネオフェニックス

三遠のここ2年の成績です。

19-20シーズン

5勝36敗(リーグ最下位)

20-21シーズン

12勝47敗(リーグ19位)

…降格待ったなしの成績を何と2年間続けました。

降格がなかったレギュレーションにもっとも救われたチームであることに疑いの余地はないでしょう。
そしてそんな三遠が移籍市場で最初に取った行動には驚かされました。

川嶋勇人選手が秋田に移籍

今季飛躍的に数字を伸ばし(10.2得点、4.2アシスト)、スティール王(2.4本)にも輝いた選手をいともたやすく手放しました。

このあと杉浦選手含め何人かの新規加入もあったのですが、川嶋選手が流出という時点で正直何をしても基本的には収支はマイナスだと考えています。

降格候補の戦力であったのにさらに弱体化した

三遠を取り巻く状況は現状こうなっています。

(安藤誓哉選手とか取れれば話は別ですが。)

 

三遠は救えるのか

先に弱体化と述べましたが、それは去年の話。

今年の三遠のロスターには

津屋選手が残留し、杉浦選手に松脇選手といった成長が期待できる選手を揃えてきました。3人総入れ替えの外国籍選手もチームの大きなファクターですが、彼ら若手の成長具合によって今季の成績は左右されるはずです。

で、表題の杉浦選手です

杉浦佑成選手

20-21シーズンスタッツ

53試合(スタメン49試合)

平均21分出場

得点…6.8点

リバウンド…2.3本

アシスト…1.3本

ターンオーバー…1.0本

3P成功率…30.2%

FG成功率…35.4%

 

これでも島根の日本人選手では最多となる平均得点です(帰化選手のニカ・ウィリアムス選手を除く)。

ただ、日本人エースと呼ばれるような成績を残すことはできず、3P%も低いものになりました。

杉浦選手はシュートは上手なのですが、ドライブで切り込むスピードのある選手ではありません。

3Pシュート以外の得点パターンとしてフィジカルを生かしてゴール下でプレーする機会が増えるかなと島根移籍時には思っていましたが、オンザコート3を多用した島根においてはその機会はほとんどありませんでした。

ディフェンスでもオフェンスと同様でスピードのある2番タイプのプレイヤーは守ることが難しいですが、インサイドでファイトしてくるタイプへの守備は決して不得手ではありません。

総じて島根ではプレースタイルがチームの需要と合わず潜在能力のすべてを生かすことができないシーズンとなってしまいました。

その杉浦選手の目標スタッツはこちらになります。

西川貴之選手

19-20シーズンスタッツ

38試合(スタメン36試合)

平均29分出場

得点…10.2点

リバウンド…2.9本

アシスト…1.8本

ターンオーバー…1.6本

3P成功率…36.6%

FG成功率…41.1%

 

茨城に移籍が決まった西川選手の一昨季のスタッツです。

TOが多いですがそれを除けばこれぐらいのスタッツは残してほしい。と言いたいところなのですが、一昨季の三遠も勝てるチームではありませんでしたので、杉浦選手にはもう少し働いてほしい。

具体的には今季の得点を倍にするぐらいの活躍は期待しています。

 

最後に

筑波大学時代には現在オーストラリアで活躍する馬場雄大選手との二枚看板でインカレ3連覇を成し遂げた杉浦選手。

大学卒業後、気付けば馬場選手は随分遠くに行ってしまいました。

得点を倍にするというのは一見不可能ですし、チーム事情にも左右されるはずです。

しかし、杉浦選手の潜在能力からして不可能な目標ではないはずですし、これを達成すれば降格回避どころか5人制の日本代表も現実味を帯びてくるはずです。

真のエースへの脱皮を図れるのか、注目していきたいところです。

 

蛇足

加藤、秋山両選手の獲得という謎ムーブをぶちかました京都

HCの著しいダウングレードに成功し、エースも流出しそうな横浜

帰化選手が抜けた茨城

もはや何もかもいなくなり佐藤公威を愛でるチームと化しそうな新潟

…三遠がマシに見えてきたのは私だけなのでしょうか?

もしかすると何もしなくとも残留できる世界がそこにあるのかもしれません。

挑戦者たちの司令塔を考察する(茨城編)

前回の続きで今回は茨城編です。

前回の話ですが、笠井選手は契約継続しましたね。

ちょっとほっとしてます。

 

茨城・今季のハンドラー事情と来季

福澤晃平選手(自由契約リストに載っているが交渉継続中)

中村功平選手(契約継続)

髙橋祐二選手(契約継続)

平尾充庸選手(契約継続)

こちらはハンドラーを残しました。

ここに

多嶋朝飛選手を北海道から加えました。

恐らくハンドラーをこれ以上増やすことはなさそうです。

一方で、ウイング陣は小林選手も眞庭選手も放出し、補強に動くのではと思われます。

今回の話には関係ありませんが。

では個々の成績を見てみましょう。

 

ハンドラー陣の成績

福澤晃平選手

20-21シーズンスタッツ

55試合(スタメン24試合)

平均21分出場

得点…10.8点

リバウンド…1.4本

アシスト…1.8本

ターンオーバー…0.7本

3P成功率…41.3%

FG成功率…44.4%

 

ハンドラーとして入れていますが実際はシューター的な振る舞いがほとんどでした。

平尾選手と2ガードを組んでいた印象が強いです。

3Pシュートは高確率で得点の2桁に乗せているのですが、177㎝と小柄であり、平尾選手や多嶋選手の横に置くにはディフェンス面で少し不安があります。

すでにロスターにハンドラーが4人いることもあり去就は微妙かもしれません。

 

中村功平選手

20-21シーズンスタッツ

57試合出場(スタメン2試合)

平均12分出場

得点…4.5点

リバウンド…1.0本

アシスト…1.1本

ターンオーバー…0.5本

3P成功率…36.9%

FG成功率…39.5%

 

スタッツ面では福澤選手に劣りますが、若いこと、恐らくコストも安いこと、B1経験があること。ここ辺りの理由でチームは残したのかなと思われます。

 

髙橋祐二選手

20-21シーズンスタッツ

47試合(スタメン3試合)

平均12分出場

得点…2.6点

リバウンド…0.6本

アシスト…1.5本

ターンオーバー…0.5本

3P成功率…22.7%

FG成功率…43.6%

 

3,4番手のハンドラーなら十分なのでしょうか、個人的にはアップグレードを図っても良かったのではと思います。

 

平尾充庸選手

20-21シーズンスタッツ

56試合出場(スタメン55試合)

平均27分出場

得点…11.0点

リバウンド…2.4本

アシスト…4.3本

ターンオーバー…1.0本

3P成功率…39.2%

FG成功率…47.5%

 

茨城のメインガードはその得点力を武器にしてチームをB1に導く立役者の一人になりました。今季は昨季から比べて約10%の3P成功率の向上を見せました。(ただ、一昨季は41%ある)。特筆すべきはTOの少なさで、これだけプレーに絡みながら1.0本というのは素晴らしい数字です。B1でもこれを続けることができるのかというのは非常に興味深いです。

 

多嶋朝飛選手

20-21シーズンスタッツ

59試合出場(スタメン10試合)

平均23分出場

得点…7.1点

リバウンド…1.6本

アシスト…3.6本

ターンオーバー…1.6本

3P成功率…31.6%

FG成功率…36.0%

 

今季はテーラー選手が加入したのですが、例年と同じような成績を残しました。

平尾選手との2ガードも面白いかもしれませんが、小柄すぎるような気もします。(ただ北海道では橋本選手と組む場面は多々あった)

18-19シーズンを除けばFT成功率が80%を超えており、基本的にはシュートの上手い選手です。北海道では今一つ生かせなかったそのシュート力を発揮できる環境を作れるのかが肝になりそうです。

 

最後に

昇格組のチームにとってハンドラーはとても重要だと考えています。

西山選手と山本エドワード選手がB1レベルでも渡り合えた信州。

古野選手、岡本選手はおろか田渡選手も通用せずチームが瓦解した広島。

群馬と信州はどちらも主力のハンドラーは残留させる一方で、B1チームから経験豊富な選手の獲得に成功しています。

降格もある来季、この2チームがどう立ち回るのかは、この2回で挙げた選手たちにかかっているのかもしれません。